大判例

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東京高等裁判所 昭和41年(ネ)921号 判決

一、控訴人は茨建設は会社として不存在であると主張するので検討する。

茨建設につき昭和三八年一〇月一〇日附をもつてその設立の登記がなされていることは当事者間に争がなく、右事実と成立に争のない乙第四号証、第八号証の一ないし九、公文書であるから真正に成立したものと推定しうる同第五号証、当審における証人堀江茂の証言を総合すると、(1)訴外根本建設株式会社の代表取締役であつた堀江茂は同会社の事業が思わしくゆかなかつたため、あらたに茨建設を設立して再起をはかろうと思いたち、自己においても設立の発起人となつたほか、川口盛治、高木金五郎、根本寛、笹原守秋ら一三名の同意をえて同人らにもその発起人となつてもらつたうえ、定款を作成し、いずれも商法所定の手続を経て開催したものでもなく、また全員出席したものでもなかつたが、書面上のていさいのみを、創立総会、取締役会を開催して、前者においては少くとも前示発起人たる株式引受人全員が出席し、定款を承認したこと及び自己のほか前示川口、笹島、根本、高木計五名を取締役に選任したこと、後者においては右取締役全員が出席して自己を代表取締役に選任したことにそれぞれして、前示のように昭和三八年一〇月一〇日その設立登記を了するに至つたこと、(2)右のように書面上のていさいをととのえただけといつても、当時、前示発起人全員から右定款と取締役の選任について承認を得ていたのみならず、代表取締役の選任についても、右取締役全員の承認を得ていること、右定款によると、(3)会社の設立のさい発行する株式の総数は一万株(一株の発行価額五〇〇円)とされ、前示発起人全員でそのうち九、九〇〇株を引受けることとされていたが、いずれもその払込をせず、前示堀江が払込総額にあたる金五〇〇万円を借入れ、同年一〇月九日これを株式払込金として、払込取扱銀行である富士銀行虎ノ門支店に払込み、同銀行から株式払込金保管証明書の交付を受け、右設立登記完了後、直ちに右の払込金全額を引出して貸主に返さいしたこと、(4)前示堀江は右設立登記後茨建設興業株式会社というものの運営にあたり、現に、茨建設興業株式会社という名称を刻した社印、ゴム印を作成のうえ、これを利用使用して、石材等の取引をしたこと、以上の事実が認められ、右事実を左右するに足る証拠はない。

以上の事実に徴すると、茨建設は、その設立にかしがあるかどうかはともかくとして、少くとも一定の事業を営む組織体たる会社として社会的に実在をはじめたものであつて、その意味で会社として成立したと認めるのが相当である。従つて、茨建設が不存在であるとする控訴人の主張は理由がない。

二、次に控訴人は茨建設は、その設立が無効であると主張するので検討する。

商法第四二八条によれば、会社の設立の無効はその成立の日より二年内に訴をもつてのみこれを主張しうべく、前段認定の事実に徴すると、茨建設が昭和三八年一〇月一〇日成立したこと明白であり、本件記録に徴すると、控訴人は、右同日から二年経過した後である原審における昭和四一年二月一六日の口頭弁論期日においてはじめて、訴としてではなく、本訴の抗弁として設立無効の主張をするに至つたことが明らかであるから、控訴人の茨建設の設立無効の主張は、その余の判断をなすまでもなく理由がないというべきである。

(浅沼 上野 柏原)

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